enocoと江之子島の歴史

enocoは2012年にオープンした新しい施設ですが、建物は古い歴史をもつ近代建築です。1938(昭和13)年に建てられたものを、コンバージョン(用途変換)しました。そしてenocoのある江之子島というエリアも、大阪の近代の歴史にとってとても重要な場所です。

「江之子島」という町名の通り、かつてこの地は文字通りの島でした。水都大阪といわれるように、かつて大阪の中心部、特に西区には、何本もの堀川が流れていました。江之子島は木津川と百間堀川とに挟まれた、中之島を小さくしたような中洲だったのです。木津川は現在もそのままですが、戦後になって東側に流れていた百間堀川が埋め立てられ、島でなくなりました。

1874(明治7)年、初の本格的な大阪府庁舎がこの江之子島に建てられました。enocoのすぐ北側です。西洋の古典様式に倣った重厚な建築は、「江之子島政府」と呼ばれて名所となりました。大阪市庁舎も、最初は江之子島に設けられました。この地は、かつて大阪の行政の中心地だったのです。そして木津川の対岸には、外国人の暮らす川口居留地がありました。洋館が建ち並ぶモダンな街は、新しい文化の発信地となりました。

1926(大正15)年、大手前に新しい大阪府庁舎が完成して行政機能は移転し、空き家となった江之子島の建築には、大阪府工業奨励館が設けられました。最新の工作機械や実験機器が揃えられ、大阪の中小企業の工業の近代化に貢献しました。

enocoの建物は、この工業奨励館の附属棟として1938(昭和13)年に建てられた工業会館です。残念ながら、元の府庁舎は戦争の空襲で焼失してしまいました。残ったこの増築棟は、大阪における数少ない戦前期のモダニズム建築として、貴重な存在です。

旧称/ 大阪府工業奨励館附属工業会館
建設年/ 1938年(昭和13年)
構造・規模/ 鉄筋コンクリート造4階建、地下1階
設計/ 大阪府営繕課
施工/ 大林組
改修設計・施工/ 長谷工コーポレーション